見えないもの

 目に見えないものを一所懸命探る。目に見えるものを駆使して見えないものを感じ取ろうとする。
 見えないものは、どう頑張っても所詮見えない。けれど、探ろうと、感じ取ろうとすることは必要なことだと思ってきたし、それは今でも思っている。
 目に見えないものしか信じられないなんて、アホだ。想像力のない人なんて嫌いだ。そんな人で、優しいだとか思いやりがあるだとか、そういう人を見たことが無い。
 でも、最近思う。
 優しさだとか、思いやりだとか、そんなものは必要なのだろうか、と。
 それを与えられる側の人にとっては、必要だろう。けれど、与える側は、果たして幸せなのだろうか。与えた優しさは、巡り巡って、その人の元へと返ってくると思いたい。でもそれは、本当か?
 それが嘘ならば、目に見える表面的なことだけを捉えて、思い悩んだり、身を削ったりしないで生きていた方が良いのではないか?


 私はそんなに優しい人じゃない。だから、こんなことを考える必要はないのかもしれない。でも、目に見えないものを汲み取ろうと、躍起になって少々疲れてしまった。
 見えないものは、どう頑張っても所詮見えない。見えないってことを認めて、目に見えるように引っ張り出す作業をしなくてはならないのかもしれない。