動くべきか、立ち止まるべきか。

ふと、昔のことを思い出した。その頃私は働き出したばかりで、遠距離恋愛をしていた。
まだお互いに若くって、お金も全然無くって、半年に一度くらいしか会えなくて、電話代ばかりが嵩んでいくような生活だったなぁ、と思う。
電話をもうちょっと我慢したらもっと頻繁に会えるのは解っていたのだけれど、それも出来なくて、いつもなんだか寂しかった。
彼がいつも会いにきてくれて、彼が帰る時は空港か駅まで送りに行っていた。
彼を見送った後のあの切なさは、なんとも形容しがたい。とぼとぼと家へ帰るのは、本当に情けないような気持ちでいっぱいだった。
でも、いつも思っていたのだけれど、彼の方はそれほど切ないようには見えなかった。「愛されていないのかもしれない」と疑いたくなるほどに。
ある時、私が彼に会いに行った。彼のところへ行ったのは、その一度きり。ただ単に、彼の実家が私がいるところと同じ街だったからという理由なのだけれど、結局一度しか会いには行かなかったなぁ。
そして、帰りの飛行機に乗ろうとしたとき、気が付いた。
「それほど切なく無い!」
彼はとっても切なそうな顔をして、私をみつめていたけれど、私は「じゃぁねぇ〜」って感じで明るく手を振っていた。


最初はそれがなぜなのか解らなかったのだけれど、今は解る。
そこに立ち止まっていると、想いが滞留してしまうのだろう。帰ろうとしている私は、もうすでに明日の仕事のことが気になったり、帰ってからやらなければならないことへと想いを巡らせていた。彼が帰ってゆくときもいつもそうだったんだろう。
身体の動きが止まると、心も止まる。止まっていると前が見えなくて、後ろばかりが気になる。
動いてばかりいると、物事がどんどん進行する。そして執着がなくなる。物事に執着したいとは思わないけれど、それだって時と場合による。
いつも前ばかり見ていることがいいことだとは思わない。たまには立ち止まることも必要。立ち止まることで見えてくるものもある。


今は動くべきなのか、立ち止まるべきなのか・・・
あ〜見極められない。。。