選択肢

 女が女として生き、仕事もし、家庭を持ち、子供も産むなどと言うことは、本当に難しいことだと思う。中にはそう言う人もいるけれど、一人の力じゃどうにも出来ない。誰かの力を借りなきゃならないこともあるだろうし、物理的にそう出来ないことだってある。


 なんだかなぁ〜 と思うことがあったのです。
 彼女は、30代前半。独身。付き合っている男性アリ。仕事好き。
 その彼女が婦人科系の病気になった。このまま仕事(激務)を続けるなら妊娠は諦めて下さい、と宣告されたらしい。付き合っている男性とは近々結婚する予定だったが、結婚しても仕事は続けるつもりでいた。
 で、選択を迫られる。子供を産むか仕事をとるか。仕事を辞めたからといって、妊娠する確立は100%ではないけれど、本気で子供を産むことを考えるのなら、辞めざるを得ないだろう。


 結局、彼女は退社するという決断を出すんだけど、それまでの過程が、なんだかなぁ〜 だったのだ。
 彼女が取った行動は「仕事を続けていたら子供が産めない」ということを会社に告げることだった。
 私は、彼女が取った行動の真意が、まったく解らない。なぜそんなことをしたんだろう? まったく想像もつかない。
 そんなことを告げて何になるんだろう。例えば、今の仕事は激務なので、これを期に部署替えを願い出るとかそういうことなら解る。けれど、彼女はそうじゃない。今やっている仕事が好きなのだから、部署替えしてまで会社に残りたいとは思っていないだろう。現にそういう申し出をしてる訳じゃないし。
 こんな身体になるまで、仕事をさせた会社への恨み言か? それも違うような気がする。本当は彼女は仕事を辞めたくない。でも自分の将来を考えて辞める。そのことに納得出来なくて、その怒りを会社にぶつけたのではないだろうか? という気がする。
 そんなことして、何になる。
 人は「そんなことして、何になる」っていうことを往々にするものだけれど、本当にこの行動はよく解らない。


 人生の中で、何かを選択することによって、何かを切り捨てなければならないことっていうのは、存在する。まさにそういうことなんだろうけど、彼女に対しては誰も命令していないし、強制もしていない。自分で選んだ道だ。
 仕事を続けるという選択をしたら、彼に反対されたり、両親に泣かれたりするかもしれないけれど、その人たちのために退社するっていう決断をした訳じゃないだろう。自分が子供を産みたくて、その可能性がある方を選択したのだろうと思う。


 何故私が、彼女に対して、これほどの嫌悪感というか、怒りというか…… を覚えるかというと「選択肢のあるうちはまだいいんだ」ってことを声を大にして言いたい。そんなことを彼女に言ったところで、彼女が不幸(と本人が思っているであろう)が消える訳では無いのは、充分承知だ。
 周りには本当に身体を壊して無理な人もいるけれど「その人よりマシでしょ?」と言ったところで、意味がないことだということも解っている。


 もし、彼女がそういう会社の体質的なことを改善しようとして、言ったのならこんな風には嫌悪しない。そうじゃない。ただ憂さを晴らしたかっただけなような気がする。
 率直に言うと、そんな憂さ晴らしに付き合いたくない。ただ、それだけです。
 とっとと退社してください。
 子供を産むとか産まないとか、仕事を続けるとか辞めるとか、人生においては大きな選択。
 そんな大きな選択を迫られたとき、私は自分の選んだ道ならば喜んで選択してゆきたい。誰かに憂さを押し付けて、そこから去ってゆくなんて卑怯すぎると、私は思う。


 これほど嫌な気分になっている理由は、他にもありますけどね。とにかくなんだか嫌な気分なのです。