虫の声

窓を開けているといると、虫の声が聞こえる。
こんな住宅街にも虫っているんだなぁ。


子どもの頃住んでいた家は、よく蛙の声が聞こえていた。眠れないくらいの大合唱だった。
当時は家がまばらにしか建ってなくて、草原のあちこちに大きな水たまりがあったので、そこにいたのでしょうね。
今その辺りは、当時の面影は微塵も無く、閑静な住宅街と化している。
なぜだか解らないけど、当時の風景を鮮明には覚えていない。あまりにも変わり過ぎたから思い出せないだけなのかもしれないし、風景が美しくなかったから覚えていないだけなのかもしれない。
それなのになぜか、あの蛙の声だけは今でも耳に残っている。うるさくて疎ましかった声だったはずなのに。


何年も経って、このマンションから引っ越した時に私は何を思い出すのだろう。
窓から入るそよっとした風と、虫の声なのかもしれない。