栗の木

私が勤めている会社は、札幌の中心部からほんの一駅ほど離れたところにある。オフィス街というよりは、近くには大きなスーパーもあって、生活感溢れるところ。
会社のあるビルの裏手が駐車場になっているのだけれど、その隣に何故か幼稚園がある。勤めている身からしてみれば、何故こんなところに?と思うのだけれど、すぐ側にはマンションがたくさん建っているのだから、そういうものなんでしょうね。
小さな園庭があって、その隅に大きな一本の栗の木がある。一か月程前の台風の後、栗の実が道路いっぱいに落ちていて、保母さんがそれを掃いていた。
今日も保母さんは何かを掃いている。黄色く色づいた栗の木の葉。


会社を出て、駐車場に止めてある車へと向かう途中、そよそよとした風が吹いてきた。はらはらと栗の葉が舞う。はらはら、はらはらと止めどなく栗の葉は舞っていた。
アスファルトを覆い尽くすように栗の葉は落ちていた。
この木が山にあったならば、こんな風にアスファルトに葉を落とすことなどなかったのになぁ。山に落ちた葉ならば、腐葉土となるんだろうなぁ、などと思う。
落ちる姿はなんだか秋の郷愁を誘うけれど、落ちた葉は、美しくもなんともない。アスファルトの上にあるというだけで、ただのゴミになる。土の上にあるのなら、全然違うのに。
なんだかこのアスファルトに囲まれた生活を疎ましく思う。


でも、私のこういう感覚っていうのは、単なる無い物ねだりなんだよな。私は山では暮らせないし。
今年も素敵な紅葉を見逃してしまって、なんだか後悔してる。また来年までそのチャンスがないのかと思うと切ない。
山へ行きたい〜っていう願望が、一本の栗の木で殊更触発される。
あ〜欲求不満。
来週から仕事が忙しくなるのだけれど、それが治まるころにはもう外へ遊びに行くのは億劫なほど、寒くなっているだろう。
あ〜後悔。やっぱり無理してでも、紅葉を見に行けば良かった。。。