プーケット 徒然

 凄い勢いで雪が降っている。割と近くに建っているマンションでさえ霞んで見えるほど。これが同じ地球なんだなぁ。何度も乗り継いで行ったプーケットは確かに遠かったけれど、実質飛行機に乗っていた時間は10時間ほど。直行便があったなら、多分2時間は短縮出来る。8時間くらいで行ける場所と、今私がいる場所は天と地ほども景色が違う。
 土地が天候が、影響を与える人間性というのはどれほどの物なのだろう。生きている環境は人に大きく影響を与えていると思うけれど、はかりしれないなと思う。でも、よく解らない。北海道以外で住んだことないから。もし暖かい土地に生まれそだっていたのなら、また違う自分だったのかもしれない。


 ビーチに行くと地元のお兄さんがサマーベッドを勧める。何時間借りても50バーツ(約170円)。たった50バーツ支払うだけで、快適な時間を過ごすことが出来る。
 日が傾くごとにパラソルを移動してくれ、ちょっとベッドから顔を上げ廻りを見渡せば「何が欲しいの?飲み物?食べ物?」と聞きにくる。もちろん欲しいものがあればすぐに届けてくれる。ベッドの上に砂が乗ればそれを掃いてくれ、タバコを吸おうと思ったらそこには灰皿が置かれる。
 トイレに行く以外は、多分一日中ベッドから降りなくてもいられるだろう。そこのお兄さんがすべてやってくれる。お姫さま状態。
 ゆったりと寝そべっていると、そこをありとあらゆる物売り等々が通りかかる。
 アイスクリーム。ランチ用の総菜。Tシャツ。サマードレス。象の置物。竹で出来た笛。ほうき。果物。それから、フットマッサージ。マリンスポーツ。ネイルケア。入れ墨もどき。ヘアメイク。
 慣れないとちょっとウザイかもしれない。でも、これはサービスなんだなって思う。「○○いりませんか?」「いらない。」「あっ、そう。」の繰り返し。けっして強要したり、しつこくされることはない。
 たまにしつこくされることもあるけれど、それは多分ここの国の人じゃないと思う。どこかから出稼ぎにきている人のような気がする。


 初めてこの国を訪れたときは、とにかくこの声をかけられるのが苦痛だった。「NO」と言う言葉を繰り返すのが嫌だった。
 なんだかね。ものすごく傲慢な旅行者になったような気分になってしまうのですよ。
 日本という国に生まれ育って、先進国で裕福だという自負が自分の中にあるのだなと思う。だから、この人たちは何かを私に売り付けようとしているんじゃないか?とてつもない金額を吹っかけてくるんじゃないか?っていつも疑って、警戒して、なんだか疲れてしまう。
 しかし、よく考えてみれば、露店以外のところで吹っかけられた記憶はない。(露店は別。あそこは駆け引きを楽しむところだからそれで良いのよね。)別に何かを売り付けようっていう訳じゃない。ただ単に買わないかどうか聞いているに過ぎない。そのことに気づいた時ほっとした。
 サービスを受ける側の傲慢さが、私は嫌いだ。出来るだけ「こっちはお金払ってるのよ。」という態度にならないようにと思う。
 それと同時にサービスを提供する側の卑屈なへりくだった態度も嫌い。あくまでもサービスの対価として、お金を受け取れば良い。そこにより良いサービスをと思って、気を配られたものならありがたく受け取りたい。
 プーケットの人々はサービス精神旺盛な人たちが多いなぁと思う。卑屈でもへりくだってもいなくって、純粋に。快適な旅を願ってくれているに違いない、そんなふうに思う。
 ビーチでのお姫さま状態も、最初はこちらが卑屈になりそうだった。いや、でも違う。傲慢にならずにありがたく受け取れば良いのだ。


 突風が吹いて、ビーチパラソルが飛ばされた。
 廻りには、子供も含む大勢の人がいて、危ない!と思いながらもただ見ていた。放っておいたら誰かに当たってしまうだろう。もしかしたら子供に当たるかもしれない。
 でもその時、ダイブしながらパラソルを掴んだお兄さんをちょっとかっこ良いなぁと思った。