恋文

恋文 (新潮文庫)

恋文 (新潮文庫)


 もう、何度も何度も読んでいるのだけれど、またこの「恋文」を開く。
 私はこの「響子」でありたいと思う。
 意地っ張りで、やせ我慢して、しっかりものを演じ、最愛の人のために自分を押し殺し、それを自分の幸福に置き換えようとする人。
 「将一」でありたいとも思う。
 人の痛みを解りながらもわがままを通す人。そして、そのわがままいっぱいの道を全うすることが、その報いだと思う人。
 でも、現実にはどちらも選べない。
 やせ我慢して、にっこり笑うこと、もわがままいっぱいになることも。人を傷付けることも嫌だし、自分を押し殺すのも嫌だ。


 どちらも潔いということなんだろう。
 「恋文」を突き付けるように渡すことが出来る日が、くるのだろうか。それともその「恋文」をさらっと受け取れる日がくるのだろうか。
 どちらも優しくて、強い人なのだと、私は思う。
 そしてそのどちらにも私はなれない。