ふんわりと
数日前に仕事であるお宅へお邪魔した。
行く数時間前に電話で約束を取り付け、そのお宅へ向かう。
着いた途端、甘い香りが漂っている。
「kaori-nさんが来るからクッキー焼いたんですぅ。」
と、言いながら彼女は美味しいクッキーと熱い紅茶を出してくれた。
可愛いな。。と思う。
クッキーを焼いて待っていてくれたことも、美味しい紅茶を出してくれたことも。
彼女の持つ雰囲気というのは、なんだかとっても可愛らしい。確か彼女は31才だけれど、いつもほんわかと、ふわりとした少女のようで、ゆるゆるとした時間の中で生きているように見える。
羨ましいという感情はないけれど、こういう生き方もあるのだな。私には縁遠い世界がそこにあるような気がする。
甘い香りのするクッキーは、そういう生き方の象徴だ。
ギスギスとしたところも、とんがったところも無く、丸くて甘くて暖かみのあるもの。
でも!
よぉ〜く考えてみたら、私も誰かが遊びに来ると言えば、何か手作りのものを用意することは多い。
お菓子ならばプリン、バターケーキ、チーズケーキ、スイートポテトetc・・・パンを焼くこともあるし、ピザを生地から作ったり、もちろん食事の用意をすることもある。
私は人に何かを食べてもらうのが好きなのだ。男だろうが女だろうが、人に何かを食べてもらうのは、私の喜びになる。
誰かのためにやる訳ではなく、誰かが喜んでくれる顔を見るのが私の喜びだからやるだけだ。
もしかして・・・
クッキーを焼いてふんわりとした雰囲気で待っていてくれる彼女も、自分の喜びのためにいそいそと何かを手作りする私も、客観的にみるとそう大差はないのではないだろうか。
もちろん私はあんな風にふんわりとした雰囲気を持った女じゃないけれど、やっていることは同じなのか・・・
もしかしたらたまには、私もあんなふんわりとした甘い香りのする女に見えるときもあるのかも知れない。
う〜ん。。。困った。
私はふんわりとした雰囲気の人に出迎えられるのは好きだけれど、自分がそういう女になりたいとは思わない。誰かに何かを食べてもらうときも、どちらかというと定食屋のおばちゃんになりたい。
「ほら。しっかり食べなきゃ精が出ないわよ〜」
なんて言いながら、ドンとテーブルに茶わんを出すようなおばちゃんの方が好きなのだ。
よし!
これからはあま〜い香りのするお菓子を出すのはやめよう。誰かが遊びにくるときは、カツ丼か焼き魚定食。これならおばちゃん路線でいけるかもしれない。